雫星記録帳

座右の銘は【因果応報】一創作オタクの徒然文

2020.1の読書録

(本当は1/31に更新したかったツラしながら)

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皆様ご機嫌よう。体調の上下変動著しい神奈崎です。紅茶の消費速度が早くて困ってる今日この頃。

文芸イベントは買っただけで満足して、びっくりするほど読書しない人間なんで、今年の目標の一つは『積読竹林伐採(創作同人小説100冊読むぞ)』なんですが、100÷12=8あまり3、なので早速出遅れているのが分かりますね! いや、新年早々に訪れた理不尽トラブルを考えると妥協点にしたい。

以下感想。筆者の敬称略でテンポよく短く参ります。ネタバレない方向でなるべく頑張ります。

 

『喪家の狼』にっこ(2019.5 関西ティア)

普段あまり中華系のお話読まないのですが、お知り合いの方だし興味あったので「BL要素あるけど大丈夫ですか?」と心配されつつも去年の関西ティア(伝説ポスカ回)で入手。にっこさんが別所で掲載されているお話を読んだ(みんなー『祝りの牝鹿』読もうぜー)人間なので、この方結構登場人物に容赦しないなという一種の確信を持っていたのですが正解でした。

滅ぼされた種族の青年ドルジの、一生を描いた物語なのですが。中華の、滅んでは栄え滅んでは栄え……という時代の展開好きにはたまらぬ。その辺の描写のテンポの良さが読んでて心地いい。あと心配されてたBL要素については話のあくまで一部だったので序盤の無理矢理系濡れ場が苦手でなければBL嗜まない方でも大丈夫かと。

あと、基本的に主人公への肩入れ強めになるタイプの読者なので、『弥終の蓮』がなければ私のメンタルは死んでいた。報われた。

 

『Port Ray 横浜×神戸 港町アンソロジー』編集:桜鬼(2019.8 HUB会神戸回)

題名通り、横浜と神戸、二つのよく似た(規模は横浜の方が倍でかいけどな)町を時代問わず行き交うアンソロ。自分が関西側の民なのもあり、興味津々で入手。ところで表紙のイラスト、あれJRの神戸ー元町間を走る車窓から見える景色で、そういう意味でも心惹かれました。

全体的に純文学寄りのお話を書かれている方で形成されており、新鮮な読み応えでした。

『大正横浜気球異聞』森大那

大正という時代に独特な台詞の書き方も手伝って、作中最もファンタジックな要素を感じる一作。発達してゆく奇術めいた科学を前にする人々の興奮と疑問、それらを背中から眺める不思議な気分になりました。

異人館の似てない親子』きよにゃ

タイトルから内容まで、ストレートな一作。子どもと大人の思いに悩みに焦燥、つまり気持ちは、いつの時代も毛色が違う。描かれた親子間には、現代にも通じるものがありました。

『退息所』オカワダアキナ

たなごの腹から始まり、幾つかの印めいた言葉たちが折り重なって、現代を舞台にしているのに夢とうつつを行き交う幻想的な雰囲気さえ纏った一作。読了後は、寝てもいないのに夢から醒めた心地。

『灯標/水平線』東堂冴

一つの道を選択した主人公、その出発を紡いでいる一作なのですが、折に触れて語られる過去がまるで紙で手を切ったかのような痛みを伴う一歩で。思いも決断も悴む手のようにごわついて、それでも今はいいのだと静かに語っている。

作品と全く関係ないのですが、諸事情で舞台になった場所を知っています。舞子。JRでは神戸市で最も西側に位置する駅であり、作中にある通り明石海峡大橋のふもとです。そう、明石市ではない。海が見えたり見えなかったりを繰り返す坂の町神戸である。

濫觴 -signal- 』桜鬼

書き手の傾向も相まって、限りなく現代のお話でありながら夕暮れの霧のように、地に足の付かない、主人公と近い妙な距離感を追体験するような一作。当て所なく彷徨い、落とし所が存在するのかと思考し、そして着地する。

『美しき晦冥』笹波ことみ

アンソロの最後を飾るに相応しい、暗から明を視界の端に捉えるような一作。時代背景も手伝って、各々の立場や転機に惑い、或いは沈み、それでも決断を下す。かすかな希望がさす締めくくりがよかった。

 

『星に願いを 鏡に愛を』凪野基(2020.1 文フリ京都)

安定した筆致力のある凪野さんが紡ぐ、SF×魔女、という体裁を保ちつつ完全に地に足の付いた物語。

メインは、難病の末に全身義体を選択した青年とゴスロリ装備魔女(見た目15歳で止まって人の何倍も生きる、という設定がとてもファンタジック)のカップル、そして青年から作られた(コピーされた)擬似人格なのですが、物語は魔女の祈りを除き「現実に起こり得そう」な現象が幾つも連なっています。先程述べた擬似人格に始まり、データである擬似人格のデータ容量とその保存・管理・維持、ネットの海を流れ続ける情報管理、擬似人格を更にコピーされたものの人権、容れ物……法整備という観点も含めて進む話は、じわりじわりと進みながらもある点を境に色を変えます。これもまた「現実に起こり得そう」なのがまた怖い。ご本人が作品を頒布する前に書かれたブログ記事に、早く書かないと現実に追いつかれる旨の発言をされていたような、と思い出し、再度物語とはいえ起こり得るかもしれない事象の数々になんとも言えない気持ちを抱いたのもまた事実。

とはいえこの作品、若干ネタバレになるのですが、『魔女の祈り』つまり神秘が神秘のまま保たれ貫き通された点が私個人として好みでした。この手合いのお話でしたら、神秘のヴェールって剥がしたくなるじゃないですか。それを剥かずに保つ、物語の描写上必要か否かはさておいて、具体的な『祈り』についての描写は意外とない。何故かそこに好感が持てました。

 

ネオメロドラマティック住本優(2019.9 文フリ大阪)

同じく確かな筆致力を持つ優さん渾身の、現代風ダークファンタジー! 安定の台所爆破系メシマズヒロイン! しかも一人じゃないぞ!(※実は二次創作で知り合った方なんですがその当時からメシマズヒロイン書いてたなと私は記憶しております)(なんてひどい覚え方してんだ)

繁栄と闇の両方を抱く大都市、パッと思い出した近しいお話は『血界戦線』です。但しシリアス度は此方の方が断然高い(※個人的意見)。なにせ生き残ったきょうだい(孤児院育ちなので血の繋がりのない姉がいる)(というか主人公の双子の妹幽霊だからな)の復讐譚でもありますからね。清く正しいアングラ社会に幻想種、バトルバトル、怪我したと思ったらまたバトル! そして主人公の綴君と、彼と繋がる形で存在している双子の妹紡ちゃん(幽霊)のコンビアクション、その魅せ方と掛け合いがまた素晴らしい。兄妹というより相棒、って感覚が近い気がしました。あと個人的に、紡ちゃんも幻想種に入っているという設定と、幽霊が食べられるものは貴重なんだぞーとばかりに食い意地張っているのがとっても可愛い。

分厚いお話なのにテンポよくすいすい読めて、怒濤の展開と風呂敷の広げ方・畳み掛け方に「うまいっ……! この人お話書くのやっぱうまい……! というか筆早すぎる!」と、一書き手として地面だむだむしました。これ感想って言っていいのかな? いやけどね、個人的には四話のタイトルとその回収手腕の鮮やかさに膝通り越して地面叩きました。なるほどそーゆー! って。

次の文フリ大阪で続編出るっぽいんで、夏を乗り切る原動力の一つにしておきます。

 

『シークレットガーデン 住本優短編集』住本優(2020.1 文フリ京都)

先程の『ネオロマ』を書かれた優さんの最新短編集(鈍器)。現代ものから異世界ファンタジーまで、多種多様な物語が詰まった、まさに「この人の話読むの初めてだけど相応の読み応えが欲しい」方向き。以下、各話感想。

『シークレットガーデン』

昨年の大阪文フリで冒頭試読したときから、どうなっていくのか気になっていたお話。諸々の事情で行き場を失った女子大生と、現役中学生小説家(美少年)の、不思議な出会いを経た二人が過ごす日々を綴った現代もの。それぞれの悩みや生きづらさを抱えながらも、懸命に一歩を踏み出す光差すような一作。従姉妹のねーちゃんの仕事っぷりがたまらなく清々しい、〆切破らない、大事。あと、珍しくメシマズヒロインではないヒロインが読めます(ひどい感想だ)。

『虚無の君、双月の丘』

こってこての異世界ファンタジー。短編集の中で唯一バトル要素もあるぞ! 書き手の好きな少年少女が味わえるぞ! という勢いある一作。読み進めながら「実はこれはこうなのでは」という想像をかき立てさせつつ、それをぴったり当てさせてくれる、読了感と爽快感、そしてなによりワクワク感が楽しめました。

『ルーヴルの少女』

こちらは、以前にも頒布されていたシリーズから。絵画に宿る魂とやり取りが出来る学芸員・美優ちゃん(うさぎポシェット装備が可愛い)のルーヴルというか美術オタっぷりは健在。それでいて、一つの引っ掛かりから物語に生じた疑問が解決へと向かうプロセスに気持ち良さも味わえる一作。サクッと読める現代ファンタジー

『最後の恋はあなたと一緒に』

これー! 原作読めてたら絶対何倍も楽しめたやつー!!

この作品、優さんの商業作品『最後の夏に見上げた空は』というお話のスピンオフになっておりまして。本自体絶版なので手に入らず、なんですよねぇ。中古を探すしかない。

大まかな物語の設定は、兵器として生まれた代償に寿命が決められた高校生の学園生活なのですが、テーマはバレンタイン。ヒロインは絶賛片想いの先生にチョコをあげたい(※メシマズなので作ろうとするがどうなっていくのかは読んでください)ものの、特殊な環境と体質では一人の外出不可なので先生と出かけることになるのですが、そこにもう一人「私も一緒に」と名乗り出た別クラスの女の子が現れて……!

という、ベースはSF寄りだけど内容はラブコメちっくな一作。終盤のとんでもない展開も含めて、甘ずっぺぇなぁ青春だなぁを味わえます。

 

 

以上となります。

感想、短く纏めるつもりだったんだけどなぁ。要練習。文字制限のあるツイッターと違って、ブログは延々と書けるのがメリットであり、書きたがりの私にはデメリットに働いた……ような……? まぁいいか。

冒頭の計算だと1ヶ月に8冊ペースじゃないと年間100冊読めないので、もりもり進めていく予定です。とはいえ、積読竹林には鈍器やアンソロも多数控えているし、他にも読みたい商業誌とか二次創作本とか、それに何より私自身の原稿もあるし。

……無理のない程度に書いて参ります。短く、出来るだけ分かりやすく短い感想を書けるようにしようね、私(自戒を込めて)。